身体拘束
スピーチロック
廃止


アクティブいつき鵜沼西
いつきの夢名古屋北
給食事業部

当法人・運営施設の方針

当法人では、入居者様、利用者様の尊厳を守るケアを貫き、身体拘束をしないケアの徹底を図ります。
施設として【身体拘束“0”を原則】として定め、日々のケアにあたります。
今後、基本的ケアの充実を図り、身体拘束のみならず【言葉の拘束廃止(※1)】にも取り組み、施設及び法人全体でレベルアップを図っていきます。
ご入居者様、ご利用者様、ご家族様にとって、「ウイングルの施設で良かった」と言って頂けるよう、一つずつ質を上げていけるような活動を施設全体で展開していきます。

※1 言葉の拘束廃止について

当社、代表取締役 原 克行は、
医療法人いつき会 介護事業部長 介護老人保健施設いつきの里 事務長に就いている時期、同法人において、スピーチロックの廃止に向けて取り組みました。
その活動内容は以下の通りです。

スピーチロックの廃止に向けけて

      ◇◇◇ 医療法人いつき会 「介護老人保健施設いつきの里」における活動 ◇◇◇
            (2011年当時の介護関連雑誌の特集記事より引用)

■スピーチロックを施設課題とした経緯

当施設は,愛知県一宮市に2004年2月に開所し、今年で7年目を迎える入所100床(うちショートステイ5床)、通所リハビリテーション40人定員の介護老人保健施設です。
当施設の身体拘束廃止の取り組み過程の中で生じた「身体拘束や利用者の尊厳を損なうケアを未然に防ぐためには、もっと前段階の『不適切なケア』について普段から施設全体で目を向けることが重要ではないか」という気づきから、スピーチロックを課題としてとらえるようになりました。
それからスピーチロック、いわゆる言葉の拘束について施設でも考えるようになり、現在一つでも言葉の拘束を減らそうと取り組んでいます。
その取り組みを紹介しながら、スピーチロックについて考えていきたいと思います。
ただし、当施設はスピーチロック0の施設ではなく、今現在、施設全体で取り組んでいる真っ最中です。しかし、利用者の尊厳を守り抜き、選ばれる施設になっていくには、現場の仲間全員と力を合わせて一つずつ取り組む必要があります。
簡単に「スピーチロック0」と宣言すればなくなるものでもなく、特に認知症ケアにおいて、職員配置にも限界がある中、現場は毎日さまざまな課題と向き合っています。
現場で利用者と向き合い、支える仲間と共に,これからもずっと誇りを持って働き、プロとしてのケアを提供するためにも、「大変だ」「難しい」から一歩踏み出し、「まずはやってみる」ことが必要だとスタートしたところです。



■スピーチロックとは
スピーチロックとは,利用者の行動を抑制し、制限する職員の言葉かけを指します。具体的には「動かないで!」「立ったら駄目!」などの言葉かけであると考えます。
また、接遇の問題と重複する部分もありますが、「何でそんなことするの!」という強い口調の叱責などは、結果的に行動を制限することにつながります。
介護施設の場合、職員の言動は、利用者の生活環境の一部を司っていると考えられます。職員のイライラした言動は、利用者の行動障害(BPSD)や不穏な状態を引き起こす原因となる点を強く認識することが重要です。
また、行動を抑制・制限する言葉を疑問に感じる風土づくりは、必ず身体の拘束廃止の糸口にもつながり、ケアの質の向上へ向かうという良い循環をもたらすものであると考えられます。
そう考えると、職員が長く勤めることのできる安心した職場をつくるためにも,言葉遣い、言葉かけについて見直し、取り組むことは、さまざまな点で良い影響を与えるということができます。職場活性化の観点からも,言葉の拘束について真剣に取り組むことは、すなわち、「人は周囲の言葉に大きく影響を受ける」、そして「人は言葉によって生きている。
何より自分自身が発する言葉に大きな影響を受ける」という職場活性化の根幹の部分へつながっていくのです。

■スピーチロックの拘束廃止及び接遇からの視点
スピーチロックは、当然拘束という視点から取り上げることができます。利用者の行動を抑制する行為は、利用者の尊厳を守るべき立場にある私たち介護福祉施設の根幹となる責任問題です。
また、スピーチロックは言葉かけという行為ですから、接遇面からの視点も合わせ持っています。例えば、丁寧でかつ双方向のコミュニケーションが成り立つ上で、「少しお待ちください。この方をお部屋にご案内したら伺いますね」と言うのはスピーチロックには当たらないと思います。しかし、乱暴かつ一方的な物言いで、「ちょっと待ってて!」などと言うのは、不適切な対応であると共に、やはりその方の行動を抑制することにつながります。

■身体拘束廃止に向けた取り組み
身体拘束廃止は、高齢者の虐待問題を未然に防止し、最期まで尊厳が守られた生活を支えるために私たちが貫く最重要なテーマです。
また、廃止に向けた取り組みは、「事故を減らし、なくし、利用者の安全を守る」というもう一つの大きな命題とも向き合いつつ、「あきらめない介護」をどう実践するかということそのものだと思います。
言葉の拘束の前に、まずは身体拘束廃止における当施設の取り組みを紹介します。
まず、2004年2月の開所と同時に身体拘束廃止委員会を設立し、月1回の話し合いをスタートさせました。開所1年目から3年目は、拘束に至るケースが常に4件から8件程度あり、毎月の委員会内でも継続して話し合いを多職種で行うものの、なかなか減らすことができませ
んでした。委員会メンバー間での意識の高まりはあるものの、施設全体での意識統一までには至らず、「そうは言っても難しい」という状況が続いていました。

●身体拘束廃止記録の一新
2007年になると、委員会内の話し合いも厚生労働省の身体拘束のガイドラインを基施設マニュアルの整備や拘束に至るまでの手続きなどのプロセス管理を徹底するなど、施設全体で拘束廃止に向けた動きが出はじめました。毎月の委員会で施設の拘束廃止に向けた考えや方針を何度も明確に伝え、話し合いを行いました。そして同年、施設内ガイドラインの見直しを実施しました。また、これらを委員会内のみの話し合いで終わらせな
いためにも、施設長はじめ役職者が集まる会議でも取り上げ、施設全体での浸透を図りました。
この年の12月、愛知県の実地指導が当施設で行われ、その際に県の担当者から貴重なアドバイスをいただきました。
それは、拘束を「外せるか外せないか」という二者択一の問題にしてしまうとなかなか解除に向けた一歩が踏み出せないため、利用者の様子観察を24時間で細かく見て、拘束している時間帯を塗りつぶし、30分単位で外せないかを検討し、試してみるとよいのでは、というアドバイスでした。このアドバイスを基に、翌年4月より「身体拘束廃止記録」を一新し、取り組みをスタートさせました(資料)。

●方針の明文化
2008年6月の委員会では、NPO法人全国抑制廃止研究会のDVDを使った勉強会を実施しました。また同年9月には、当法人のホームページにて、身体拘束撤廃を目指す施設として宣言し、方針を改めて明確にしました。10月には、全国抑制廃止研究会の研修会に介護士、看護師、相談員の3人が参加し、拘束の疑似体験を行い、他施設の職員とのディスカッション、拘束に関する裁判事例の紹介などを通じて,多くのことを学びました。
その後、定期的に行っている家族アンケートからいただいた意見をきっかけに、接遇に関する指針を定め、ホームページでも宣言し、施設全体で取り組みをスタートさせました。接遇に関しては以前よりさまざまな取り組みを行っていましたが、より取り組みを具体的にさせるために、明文化しました。

●スピーチロックについての話し合い
2009年2月、当施設内の身体拘束は0となりました。この年の新人研修から拘束の疑似体験を取り入れ、10月には、愛知県老健協会看護介護部会の西尾張ブロック長を務めた際に、同地区内20施設のうち16施設、計81人で「身体拘束廃止への取り組みについて」をテーマに研修会を実施し、その中でも特にスピーチロックについて話し合う機会を持ちました。
2010年2月、関係する職員に対し、スピーチロックについての意識調査を実施しました。3月の委員会内でも、この結果を基に話し合い、施設として総括し、何をすべきかを検討しました。ここで得たものは、4月より施設全体で取り組みます。

■身体拘束廃止に向けた重要な要素
取り組みの経過を振り返ると、特に次の点が廃止に向けて重要な要素であると感じます。これは身体拘束に限らず、スピーチロックの改善にも通ずるものです。

①施設方針の明確化と周知(宣言)
②手続きなどルールの明確化
③意識を変えるための外部研修と内部研修、新人研修の充実
④解除に向かう方向付けを促進する記録方法
⑤継続して話し合う委員会、各部署会議、役職者会議の体制
⑥拘束のみに視点を置くのではなく、不適切なケアを取り除き、質を上げる点に注力




■スピーチロックに関する意識調査
次に、当施設で実施したスピーチロックに関する意識調査の結果を紹介します。
当施設の現状は,全国の皆さんの施設とも何らかの共通部分があるのではないかと思います。
アンケートは、介護士、看護師、支援相談員、PT、OT、ST、管理栄養士など、利用者にかかわる職員に実施しました。
通所リハビリテーションの職員も含んでいます。アンケート回収は計71枚、設問によっては複数回答があります。


●選択式調査の結果
1. 言葉の拘束について知っていましたか?
①知っていた…61
② 言葉としては聞いていたが意味は分からない…4
③知らなかった…4
④無回答…2
研修や委員会活動などの実施から、言葉として「知っている」というレベルの浸透は図られていることがうかがえます。

2. 現場におけるケアおよび業務中の、「ちょっと待って!」「動かないで!」などの言葉の拘束について

①しょっちゅう使っている…5
②たまに使ってしまう…25
③言ってはいけないことは知っているがやむを得ず使っている…35
④ほとんど使っていない…8
これは、スピーチロックという言葉そのものは知っていても、施設としてその定義付けそのものがあいまいであり、職員へ「自分の対応は大丈夫だろうか?」という心理的負担をかけている可能性がうかがえます。

3.スピーチロック0に対して

①不可能である…7
②なくしていきたいが難しい…26
③ 代わりの言葉を使う,ケアのあり方を見直す工夫で0に近づけることは可能…36
④無回答…2
①と回答した人は、認知症フロアで従事する職員が8割以上を占める結果となりました。認知症フロアでの事故防止に精一杯動く職員の、対応への葛藤を感じます。

4. 他の職員のスピーチロック(言葉の拘束)に関する発言を聞いたあなたは、どんな気持ちになりますか?
①大変心が痛む,やめてほしい…26
②気になるが仕方がない…43
③気にならない…2

5. スピーチロックをなくす活動についてどう思いますか?
①大変有意義、ぜひ取り組みたい…37
②施設として取り組むなら行う…23
③ 意味はあると思うが実際は難しいので取り組む気持ちはない…12
④ 取り組む意味が分からない、取り組みたくない…1
取り組みへはおおむね賛成の意見ですが、あまり観念的な取り組みや、理想論や一般論だけで押し付けても現場の理解は得られにくいので、具体的かつポイントを絞った展開がよいと考えられます。

6. ご自身の家族が言葉の拘束を受ける現場を見たら、どう感じると思いますか?
①大変胸が痛む,我慢ならない…27
②気になるが仕方がない…40
③気にならない…0
④無回答…3

●記述式調査の結果
この他、スピーチロックについての記述欄では、次のような意見が寄せられました。

①スピーチロックの定義づけ
・ 個々でスピーチロックに対する線引き、意識に差があるため、施設としてスピーチロックの「定義づけ」をすることが必要。
・ 待っていただく理由を説明し、待っていただいた時は謝罪の声かけをするよう心がけていますが、スタッフ数が少ない時にナースコールの数が多かったり、呼ばれたりした時はすぐに対応できず、公平に順番に対応していても結果的には「待ってください」となるので、スピーチロックになるのでしょうか?
・「 ちょっと待って」と言わずに、30秒とか1分待ってくださいと、時間を決めて言うようにしていますが、それもスピーチロックになってしまうのでしょうか。

② 具体的にどのような行動を取るか?
・「 ○○をするまで少し待ってください」「ここは危ないので動かないでください。あちらに行きましょう」など、拘束感を与えないように相手が納得いく内容にしているつもりです。常に意識として持ち続けなければならないと思います。
・ 代わりの言葉を具体的に挙げると、現場の各場面で活用しやすい。
・ 業務に追われ、余裕がない時にこういった発言がよく見られるため、業務の運用、人員配置の見直しが必要。
・ 一言一言の言葉を取り出して表にしてみるなど、例を作ってみるとよい。
・ あまり難しく考えることなく、まず普段何げなく使っている言葉から見直してみてはどうでしょうか。少しずつ前進することが大切だと思います。
・ おそらく本人が意識していないことが多いので、周りの人がぜひ伝えてあげるべき。
・ 待っていただく理由を言う必要性を感じる。代わりとなる言葉を積極的に使う意識が大切ではないかと思う。

③現場を支える今の職員の気持ち
・ 言った後、自分でも後悔していますし、周囲も嫌な雰囲気になるので、なくなれば良い施設に近づくと思います。
・ できるだけ使わないようにしているが、全く使わないわけではないので、他の人が使っていて「良くないな」と思っていてもなかなか注意できない。
・ 今のフロア状況では3人同時に動き出すことは日常茶飯事であり、言葉を選択している間に事故につながらないとは限らない。時と場合によると思う。
・ のんびりと悠長なことを言っていると、事故が起きてしまうと思います。スピーチロック0は大変難しい問題です。
・ 緊急時などとっさの時は現場で働く以上、気をつけることはできても、なくすことは難しい。
・ スピーチロックを減らすための取り組みは、職員のモチベーションや質の向上に自然とつながっていくと思う。
・ 言葉は状況に応じて使うことができるものなので、同じ言葉のみで伝えるのは頭を働かせていないとも言え、余裕がないことを表している証拠です。言葉遣いはその人の印象を決めるので、良い言葉を発していく意識を高めていきたいと常々思っています。
・ すぐにスピーチロック0にはならないと思うが、意識することでもかなり減らせるはず。


■アンケート結果を基にした取り組み
このアンケートの意見を参考に、当施設では身体拘束廃止委員会で話し合い、次の点に取り組んでいます。参考にしていただければ幸いです。

●言葉かけ事例集の作成
具体的にどんな言葉かけを行うかを明記した言葉かけ事例集を作成し、施設全体に提示して、まずは簡単にできるところから実施するようにしました。
例えば、「ちょっと待って」「立たないで」「動かないで」という言い切り型、命令型の言葉の代わりに、「どうされましたか?」といった質問系の言葉を使い、その後のやり取りの中で「なぜ待っていただくか」の理由説明を行うことも忘れないようにします。
また、利用者の急な立ち上がりに、転倒してはいけないと思うあまり、つい大きな声で「動かないで!」「じっとしていて!」という言葉かけが生じるケースについては、「○○さん」と名前をまず呼ぶことなどを明記しています。
このような事例集を皆の目につく場所に張り、1日の終了時にスピーチロックについて振り返り、互いにチェックすることも、意識付けを行うための有用な方法だと思います。

●定義づけの明文化
定義づけを明文化することも有効だと思われます。当施設では特に「ちょっと待って」という言葉そのものがすべてスピーチロックであるという誤った認識もあったため、再度定義づけを行いました。

●施設としての宣言
スピーチロックへの考え方、取り組む方向性を施設として明確に宣言します。
効果的なものに、単なる言葉だけを標語として掲示するのではなく、ビジュアルにも訴えるポスターを作成し、視覚面にも訴えて浸透を図るという方法があります。

●検討・見直しの場の設置
やりっ放しにならないよう、継続的に検討、見直しを行う場をつくることも重要です。



■「無意識なスピーチロック」に対する意識改革
悪気なく、または現場の大変な状況から、つい無意識のうちに習慣となってしまった言葉遣いや言葉かけを急に変えていくのは簡単ではないかもしれませんが、言葉かけもケアを形成する重要な要素の一つです。そして、「場」の雰囲気を形成する重要な要素でもあります。そういった観点からも、前述の当施設の取り組みと併せ、次の職員教育への導入を検討してみてはいかがでしょうか。

①スピーチロックに関する意識調査などを行い、まずは現状を把握する。
②どんな言葉かけを行うかを具体的に推進するための言葉かけ事例集の作成を委員会などで役割分担し、検討を行い、導入する。
③言葉かけ事例集の導入と同時期に施設(事業所)方針を明らかにする。
④新人研修のプログラムには必ず入れて実施する(新人を指導するマニュアルがあれば、そちらにも追加する)。
⑤「新人に今後導入するので」というアプローチで、現任研修も年間研修計画に入れて実施する。可能なら近隣の施設や事業所にもお願いして、合同でディスカッションを行う場を設定すると、外部の新鮮な意見も聞くことができ、相互に良い機会が持てる。
⑥導入後、家族へのアンケートを取るなど、外部の声も聞く場をつくる。
⑦部署ごとに推進担当を決めるなど、ボトムアップの仕組みをつくる。
⑧施設や事業所の発表大会や事例検討会など発表の場をつくり、成功事例、失敗事例などを共有する。
⑨評価制度の評価項目に加え、かつスピーチロックに関する言葉かけに対する評価ウェイト付けを取り入れる。




■職員の気持ちを1つに
繰り返しますが、スピーチロックの廃止は接遇の観点からも、利用者の尊厳を守る観点からも、今後の介護現場にとって非常に重要な取り組み課題です。
介護現場では、日々変化する状況の中で「そうは言っても難しい」という葛藤との戦いであり、「一歩踏み出してみよう」という勇気を持った行動の繰り返しでもあります。現場の職員(仲間)と歩調を合わせつつ、方向性はしっかりと信念を持って進むことが大切です。
施設の職員全員が気持ちを1つにして、まずは的を絞ったいくつかの言葉かけの改善から始め、職場内の雰囲気を変えていくこと、そして職場内で不適切な言葉かけへの違和感を大切にして取り組みを進めていくことで、言葉による拘束であるスピーチロックを限りなく0に近づけていくことができるのではないかと思います。

0586-62-1133

〒491-0201
愛知県一宮市奥町字宮前44番地1

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